ミニのボディサイズは、今の軽自動車より小さい。全長3.05m、全幅1.44m、全高1.33mというサイズは、大人4人が乗って移動できるクルマとしてはかなり小さい。
ところがそんなミニをさらに小さくしてしまった特別なミニも存在するのだ。それがミニ・スプリント。60年台の英国ではサルーンカーレースが盛んで、そこで活躍していたミニの戦闘能力をさらに高めようとした二人の英国人がいた。
レーシングドライバーのネベル・トリケットとエンジニアのジェフ・トーマスは、ミニの走行性能を維持したまま、空気抵抗や重心を引き下げれば、より速いラップタイムを刻めるのでは、と考えたのだ。そこでミニのボディを隅々までチェックした結果、ミニのボディを薄くスライスして繋ぎ合わせることを思いついたのである。1966年のことだ。
それがミニ・スプリントのルーツ。ピラーをカットするチョップトップだけでなく、ヘッドライトとグリルの間のパネルもカットして短縮し、それに合わせてフェンダーやドア、ボンネットやトランクパネルなどもカットして薄いボディを作り上げたのだ。リアにもフロントのサブフレームを移植してリアサスペンションをWウイッシュボーン化し、タイヤを大径化したこともあって、その効果は絶大だったらしい。

そんなマシンに目を付けたのが大富豪でレーシングチームも運営していたロブ・ウォーカー。彼が出資することでミニ・スプリントは量産されることになったのだ。
その結果、ロンドンの自動車ディーラー、スチュワート&アーデンが販売を引き受けることになり、この高性能な特別製のミニは販売されたのである。しかしあまりに高価過ぎて、極めて少量が販売されただけにとどまった。

しかし、その後も英国のコーチビルダーやチューナーが、この手法を真似てスプリントボディを作り出している。日本でもいくつかのチューナーが手がけている。有名なのはナリタガレージのスプリントだろう。
チューナーやブランドそれぞれに微妙なフォルムの違いなどがあり、こだわりや工夫などが込められていることが伝わってくる。
こうしたスペシャルなミニも今後紹介していくのでお楽しみに!