ミニは基本設計が古く、搭載されているA型エンジンはミニが登場するよりずっと前からあるので、さらに設計が古い。それでも丈夫で低振動な4気筒エンジンということから、ミニを延命させる要因の一つにもなった名機だ。
しかし設計の古さからの弱点も色々ある。したがってそれをカバーするパーツも開発され、定番パーツとして幅広く利用されているものがいくつも存在するのである。
その一つがサーモハウジングボルト。シリンダーヘッドの上面に備わるサーモスタットを収めるスペースがサーモハウジングだ。サーモスタットの上にはアッパーホースがつながるサーモハウジングカバーがあり、サーモハウジングとは3本のボルトで締結されている。

サーモハウジング自体が冷却水で満たされているので、純正の鋼製ボルトでは錆びることになり、シリンダーヘッドと固着してしまう原因になる。それを避けるためにボルトをステンレス製としたのが、ここで紹介するサーモハウジングボルトだ。
ステンレスはスチールにクロームやニッケルなどを添加した合金で炭素を含まないため、酸素と結びつきにくい。結果として硬く錆びない素材となっているのだ。
このサーモハウジングボルトをステンレス製とすることで固着を防ぐのは、サーモスタット交換などメンテナンス時の作業性を高めることにつながる。ミニのエンジンは鋳鉄ブロックに鋳鉄シリンダーヘッドでクーラントを錆で汚す原因になる。そのため定期的にクーラントの交換や水路の洗浄などを行わないとラジエター内部が目詰まりを起こしてオーバーヒートの原因となるのだ。
またボルトが錆で固着してしまうと、緩めて取り外すのが大変なだけでなく、緩めようとして折れてしまうこともある。そうなると折れたボルトを抜き取るための作業が増えて、作業完了まで時間がかかってしまうだけでなく、費用も高くなってミニオーナーの負担も増えてしまうのだ。
サーモハウジングボルトをステンレス製にすることで、こうした無駄な作業が増える心配から解消されるだけでなく、エンジンルームのアクセントにもなるなど、ミニを大事に労わるオーナーにとってはメリットが色々とあるアイテムなのである。
ただし長期的な使用を考えるとステンレスは鉄よりもイオン化傾向が小さい素材なので、電位差によって鉄を錆びさせることにつながる。定期的に脱着しているなら大丈夫だが、締め付けて放ったらかしは結局固着することになりかねないから注意が必要なアイテムでもある。
そうした事象まで把握して、使いこなせるメカニックにミニのメンテナンスを任せたいものだ。