大昔のクラシックカーの車輪を前後から眺めてみると、下が狭く上に向かって広がるように車体に取り付けられている。これはポジティブ・キャンバーという設定で、直進安定性や車軸回りの剛性を高めるには有効な方法だった。

しかしこれは車輪が大きく、走行速度も低いため有効だったが、車輪が小さくワイドになっていき走行速度が上昇してくると、より安定性が高く、旋回時にはロールによってタイヤの設置面積を確保しやすいネガティブ・キャンバーが主流になっていく。
ミニは設計時は10インチと小径ながら145という細いタイヤサイズもあって、ポジティブ・キャンバーに設定されていた。フロントはWウイッシュボーンなのでセッティングによってキャンバー角は調整できるが、リアのラジアスアームはシャフトによって固定されている。
そして1959年の生産開始から2000年の終了までリアタイヤの基本設定はポジティブキャンバーのままだったのだ。ローバーがどうして、リアタイヤのジオメトリー(どういう風に動くかという寸法や構造)を変更しなかったのか。理由は定かではないが車体構造に手を入れるには、新たな走行テストなど工数の多い開発作業が必要なため、コストの問題で見送られたのだと考えられる。

普通に街を走るだけなら、ノーマルの足回りやタイヤでも問題は少ない。タイヤの片減りくらいのものだ。けれどもよりスポーティに走ろうと思ったり、クルマをしっかりさせたいとホイールアライメント(4輪のホイールの向き)調整をするのであれば、追加したいパーツがある。
それがリアキャンバーキット。文字通りリアタイヤにキャンバー角を付けられるようにするパーツだ。具体的にはラジアスアームのシャフト支持部分を固定から調整式にすることでタイヤの角度を調整する。
これまでの長い時間に様々なチューナーやサプライヤーが開発して提供しているので、その構造や仕組みは実に様々で色々なデザインのキャンバーキットが存在する。
キャンバーだけでなく、トー角も調整できるモノもあるので、走りにこだわるミニオーナーには、アライメント調整が確実にできるトーも調整できる仕様をお薦めしたい。


