クラシックミニと言えば英国のアイコン。これほど英国らしさが凝縮されたクルマはないと言っていいほどだが、実はミニは英国以外の地域でも生産されたことがあることはご存知だろうか。
ミニが誕生した頃の英国以外の自動車メーカーは、まだ歴史が浅いところも多く、日本でも日産はオースチン・ケンブリッジをノックダウン生産していたし、サニーに搭載されたA型エンジンはミニのA型を手本に開発されたものだ。
また自動車メーカーがなかった地域でもミニはノックダウン生産された。そのためニュージーランドやオーストラリア、南アフリカ、イタリア、スペインなどでもミニは生産されたのだ。
中でもイタリアはイノチェンティ社がBMCとライセンス契約を結び、1965年からミニをノックダウン生産するだけでなく独自のモデルを作り上げている。それが71年に登場したイノチェンティ・ミニ・クーパー1300だった。
これはMkIIIクーパーSに近いモデルではあるが、実際には細部が異なり、イノチェンティ・ミニらしいディテールに独自のクーパーロゴが加わる個性的な仕立てとなっていた。


またエンジンも1275GTと同じ仕様となっており、クーパーSほどチューニングは凝っていないものの、排気量アップと吸排気チューンで十分すぎる動力性能を誇ったのだ。
内装が独特で6連のメーターが水平に並ぶ高性能スポーツカーのようなレイアウトは、クーパーという高性能モデルをさらに強調するものであり、ファンを喜ばせた。そのため日本でも人気となり、70年代には日本にもたくさん輸入されたが、その多くは中古車を輸入したもので、故障やボディの腐食により、スクラップ処分されてしまい、すっかり姿を消してしまった。

それでも大事に乗り続けたオーナーも少数存在するのだろう、現在でも十数台は日本に生息するようだ。
イノチェンティ社はその後BLMC社の傘下となり、1974年にはミニのプラットフォームを利用してベルトーネがデザインしたスクエアなボディをまとったイノチェンティ・ミニ90/120を開発。さらに後にはデ・トマソグループに売却されて、1977年には高性能モデルとしてイノチェンティ・ミニ・デ・トマソをリリースするようになるのだ。
ミニ・デ・トマソは日本でも人気となったモデルで、ミニERAターボと同じくA型エンジンにターボをドッキングしてエンジンの最高出力を75psにまで高めた。
しかしメカニズムはミニそのもの。ボディサイズもミニ並みにコンパクトで、ベビーギャングっぽさがたまらない魅力なのだ。