昔は国産車のチューニングと言えばソレ・タコ・デュアルと言われたもの。ソレ・タコ・デュアルはソレックスのサイドドラフトキャブ(ウェーバーとほぼ同じ)、タコ足(等長EXマニ)、デュアル(2本出しのリアマフラー)で、エンジンチューニングの三種の神器と言われたものだ。
ソレックスはフランスのキャブレターメーカーだったが、日本のミクニがライセンス生産して国産車に供給していたので、日本では手に入りやすかった。
ミニの場合はちょっと特殊で、チューニングパーツの定番も変わってくる。昔はSUツインキャブとチューニングヘッド、スリーブランチ(LCBとも呼ばれる)という3in1のEXマニの三種が定番のキットだった。
これはノーマルのミニがSUシングルキャブ(クーパーやクーパーSはSUツイン)で吸い込める混合気に制限があったのと、ポート形状や圧縮比を見直すにはOHVのA型エンジンではヘッドを丸ごと交換してしまう方が手取り早かったことから、吸排気系の強化とセットで実施すると効果的だった。
ミニが登場してすぐに、アーデンやダウントンといったチューナーたちがチューニングヘッドを作り出し、SUツインキャブとEXマニを組み合わせたチューニングキットとして販売した。
キャブ時代のミニのチューニングはそこから基本変わらず、さらにチューニングを望む場合はカムやピストン、クロスミッションなどもCパーツ(コンペティションの略=BMC純正の競技用パーツ)として用意されていた。
ミニのエンジンがインジェクションとなってからは、そんな常識も変わった。ミニのECUはちょっと特殊でメモリの書き換えができないので、いわゆるECUチューンができない。

しかし逆に専用のテスターを使えば微調整できる部分もあって、エンジンにノックセンサーが備わっていないため、ノッキング防止のために若干混合気は濃いめにセッティングされている。こうした特徴を利用すれば、インジェクションミニでもさらにパワーを引き出せるのだ。
さらにインジェクターの燃料噴射量も燃圧を調整することで微調整ができる。


こうした条件をクリアできる技術力があれば、インジェクションミニでもチューニングは可能。あるいはECUをそっくり汎用のECU(通称フルコン)に換装すればより大胆なモディファイも可能になるが、そうなるとクーラーとの組み合わせが難しくなったり、セッティングが大変になるので、時間と手間が大幅に増えることになる。
インジェクションミニのECUは、何とも絶妙な制御でA型エンジンを動かしている。その仕組みを完全理解し、さらに工夫を凝らすことでチューニングまでできるのである。