アルビオン・モータースポーツフェスティバルは、日本のモータースポーツの原点とも言えるローカルなジムカーナ競技を今に伝える、ミニを中心とした英国車のイベント。ジムカーナは舗装されたある程度のスペースとパイロン、それにストップウォッチさえあれば開催できる気軽で、それでいて奥の深いモータースポーツ競技だ。
ミニが日本で乗られ始めた頃は、こうしたジムカーナイベントが全国で開かれていた。浜松のミニと英国車の専門店、ディンキーincのオーナーズクラブ「クラブ・アルビオン」が主催するアルビオン・モーターフェスでミニの走りの楽しさに本格的に目覚めた人も多いらしい。

だが4年間をコロナ禍で中断してしまっていて、昨年身内だけでプレ再開をこの「とよはし産業人材育成センター」で開催し、今年満を辞して再開されたのだった。
ジムカーナのエントリーは車種やカテゴリーで全部で5クラスに分けられ、それぞれのクラスでタイムを競う。ケーターハム・スーパーセブンによるセブンクラスの参加者は、やっぱり本気度が高い。軽量で低重心な車体をキビキビと走らせ、タイムを削り取っていく。その腕前にはギャラリーが見惚れることも。
そこへいくとミニクラスの参加者は、やる気の振り幅が広すぎる。後輪を浮かしながらタイヤグリップの限界まで使った激しいコーナリングで攻め込む猛者もいれば、トコトコとマイペースで走るビギナーまで実に様々。
攻め過ぎればタイムロスに繋がるので、いかにロスのない走りでまとめるかが、タイムアップの鍵だと分かっていても熱くなるのは、それだけ本気で遊んでいるからだ。
レディースクラスは、競技という感覚ではなく超安全運転に徹するドライバーもいれば、2回目のアタックでは勢い余ってコース外へと飛び出してしまう(幸いマシンへのダメージや怪我などはナシ)度胸のあるアタッカーもいたほどだ。


ジムカーナの難点がコースの分かりにくさであるので、今回もなるべくシンプルかつ攻めがいのあるコース設定がなされていた。それでも1回目にミスコースをしてしまうエントラントは続出。
教習所のようなコースは走りやすい反面、同じような曲がり角ばかりなので間違えやすい部分もある。しかし2回目のトライで見事タイムを叩き出し表彰台を獲得したエントラントも複数いるから、挑戦は間違いじゃない。
多国籍軍と名付けられた英国車以外も参加OKなクラスには、腕自慢のエントラントが様々なクルマで挑んだ。迎え撃つのはナンバー無しのミニなど本気度高いマシン。しかし優勝したのは1000ccのトヨタ・パブリカ!

ジムカーナはやはりマシンよりもテクニックだと実感させられたのは、ミニクラスではハンデタイムの恩恵もあって、なんと1000ccで出場の柏井さんが優勝したことだ。5秒マイナスは大きいが、結果としてセブンクラスの優勝者とも1秒もないほどのタイムなのだから凄い。



こうしたハンデの設定など、絶妙なルール作りが、異なるマシンでの競い合いを一層面白くさせている。このあたりは長年ジムカーナイベントを運営してきたノウハウを感じさせた。
お昼休みには、3人のドライバーが交代してジムカーナの合計タイムを競うファミリージムカーナをエキシビジョンとして実施。これは来年、本格的に導入する計画だという。ドタバタのドライバー交代も含めて、見ていても楽しめた。
当日は午前中は時折小雨がパラつくも、午後は薄く日も差す曇りという、イベントにはあつらえ向きの天候で、エントラントもギャラリーも1日を満喫できたようだ。


アルビオンモーターフェスは、プロのイベント屋が運営しているようなレースイベントとは違った、気軽に楽しめる適度な賑やかさが、何とも心地良かった。
英国車を楽しんだ先人たちに想いを馳せるようなイベントは、すでに来年の開催へ向けて着々と計画を進めていることだろう。