ミニには2ドアサルーンと長モノがあるが、それ以外にも仲間がたくさんいる。ミニのコンポーネンツを利用した車種まで含めると、その数はとても数えきれないほど。
中でもBMC(ミニを開発、生産した最初のメーカー=後のローバー)が開発したモーク(英語でロバの意)は、なんともユニークなモデルだ。
元々は軍用車として開発され、輸送機からパラシュート投下されることまで考えて積み重ねて保管移動できるように、フロントウインドウを畳めば薄い箱型になるようボディ形状も工夫されていた。

しかしミニのパワートレーンを利用しているため、最低地上高の不足など不整地での走破性に問題があったので軍用として採用されることはなかった。けれども、その後市販されてビーチカー(リゾート地などでの移動用モビリティ)として利用されることになったのである。
小さなフロントウインドウ以外は乗員と普通のオープンカー(?)とは段違いの解放感が、このクルマの持ち味。堅牢なモノコックボディによる軽快な走りと相まって、独特の走行感覚をもたらすのだ。
しかも今回紹介するモークは普通のモークじゃない。
「ボディのコンディションがいいモークが手に入ったので、自分で理想の仕様に仕立ててみました」と、オーナーのぷっちょさん、こと湯浅健人さんが言う通り、なんとも魅力的なチューンドモークなのである。
純白のボディにレース用エンジン、ツインインジェクション!
モークを単なるジープもどきのビーチカー、オープンカーと思っているなら、それは大いなる間違いだ。実は低重心で高剛性のボディは、ミニの足回りと相まって、コーナリング性能も抜群でスポーツカーとしての素質を持ち合わせているのだ。
それは850ccしかないノーマルのA型エンジンを搭載した初期のMkIモークにも言えることで、その軽快な走りは何とも魅力的なのである。
そして湯浅さんの白いモークは年式が新しいだけでなく英国リチャード・ロングマンのフルレース用コンプリートエンジンを搭載し、さらにSUツインキャブからフルコン・インジェクションへと進化させることで、幅広いセッティングを実現している。
しかもミニでは難しいツイン・インジェクターを、なんと独学でモノにしているのだ。ボンネットを開けるとSUツインにも似た2本のエアファンネルが誇らしげに突き出ている。そう、湯浅さんは板金塗装以外はこのモークをDIYで作り上げてしまったのである。



子供の頃から好きだったミニに一途で、18歳で運転免許を取得して以来、ミニを整備して理想のミニを作り上げては、その走りを楽しんできた。
エンジンは低回転域ではトルクが細いものの、キャブ仕様と違ってカブる心配も少ないから、それほど扱いにくさはない。そのうえ、パワーバンドに乗ってからの過激さはまさにジキルとハイドw
ミニ用のKAD製クイックシフトを加工してフロア下を貫通するシフト機構をフロア上へと移設。これによりシフトフィールもストロークも最高なシフターを実現しているのだ。



3000rpmから上は同じエンジンかと思わされるほど、激変する元気っぷりが何とも刺激的なのである。これをサーキットだけでなく、公道でも楽しめるようにするなんて、反則とも思えるほど羨ましい。
パワーバンドは3000rpmから8000rpmと幅広く、ちょっと公道でブン回すのはヤバいほど、強引に加速していく!
まるでFFのケーターハム・スーパーセヴンとも言えるような、過激なオープンスポーツへと仕立て上げているのである。
ミニのワンメイクレースにも、湯浅さんはこのモークで出場し、見事優勝。運転はちょっと難しいけれど、ドライビングテクニックが備わっていれば、速くて楽しい走りが味わえるクルマであることを証明しているのだ。
こんな刺激的なクルマを作り上げることができるのはスキルがあるから、だけじゃなくミニの派生モデルゆえ。コンパクトで軽量、高剛性というミニのプラットフォームは、時代を超えて今も過激な走りを実現してくれるのだ。








