キャブ仕様のミニは、MkIIIまでのビンテージミニと、ミニ1000、そしてキャブクーパーのほか、インジェクションミニをキャブ化したモノなどがある。
そしてキャブ仕様でも装着されているキャブレターの仕様やエンジンの内容によって、エンジンの性格や運転の仕方は変わってくるのだ。まずはミニにノーマルで装着されているキャブであることを前提に話を進めていこう。
キャブか、インジェクションか。これは当然、どちらにも良さがある。まずインジェクションは、どんな気候、気象条件でも混合気を適正に調整してくれるため、完調さを維持するだけで基本的には手間要らず。ミニ専門店に定期的に点検、車検整備に出していれば、基本的には安心して乗り続けることができるだろう。


ただしミニのインジェクションの仕様は普通のクルマとはかなり違っていて、不調になってもECUが調整して何とか走れるようにしてくれるので不調に気付きにくく、専用のテスターを駆使できる熟練メカのいるミニ専門店でなければ不調を完全に取り除くことは難しい。
残念なことに完調なインジェクションミニの走りを知らず、不調を抱えたまま乗り続けているオーナーは非常に多いのが現実だ。
一方、キャブレター仕様のミニの良さは、シンプルなメカニズムによる耐久性の高さ、故障時にも問題箇所が発見しやすく修理しやすいというのが魅力。キャブならではのちょっと濃いめの混合気によるトルク感やキャブの種類やエアクリーナーによっては吸気音、力強い排気音も楽しめる。
未だに人気が根強いキャブ仕様のミニだけど、乗りやすく、快適性も高いのはインジェクションミニの方だ。
96年式までのインジェクションミニならキャブ化も可能なので、どちらも選べることは選べる。ただしキャブ化してある個体は、ノーマルのインジェクションの部品が揃っていなければ、元通りするのは大変だ。
キャブ仕様のミニでも、純正以外のキャブを装着しているクルマは、かなり手強いミニと言える。純正はSUキャブと言う、アクセルペダルを踏むとバタフライバルブは開くが、その先にあるサクションピストンがエンジンの負圧上昇に応じて上下動することで吸入空気を調整するため扱いやすく、それでいてスポーティなフィーリングが得られる。


それに対しサイドドラフト型に代表されるウェーバーなどの固定ベンチュリー型のキャブレターは吸気抵抗が少なく、加速時にはポンプにより燃料を増量することから加速性能に優れたエンジン特性を得やすい。しかしキャブレターのセッティング次第ではあるが、加速時にプラグがカブらないようアクセルの踏み具合を調整してやる必要がある。
ドライバーに乗りこなすスキルやセンスが要求されるのが、サイドドラフト型のキャブレターなのである。したがって街乗りにはあまり向かず、スポーツ走行向けのキャブと言えよう。


ミニのA型エンジンにはSUキャブレターの方が特性としてはマッチングが高いが、ウェーバーキャブによる吸気音や力強い加速が好きなドライバーも少なくない。けれどもエンジンチューニング同様、いつのまにかやりすぎて街乗りしにくいクルマになってしまうことも多いので、注意が必要だ。